たなおろス。

妄想癖・脱線症と戦いながら、映画や本、世事について、思ったことを 棚卸し(たなおろし)するブログ。

タルト・タタンの夢

タルト・タタンの夢 タルト・タタンの夢 近藤 史恵
 【目次】
 タルト・タタンの夢
 ロニョン・ド・ヴォーの決意
 ガレット・デ・ロワの秘密
 オッソ・イラティをめぐる不和
 理不尽な酔っぱらい
 ぬけがらのカスレ
 割り切れないチョコレート

下町のフレンチレストラン「ビストロ・パ・マル」に持ち込まれた謎を三舟シェフが解き明かす。俳句が趣味で同好会のおじ様キラーな元OLソムリエの金子ゆきがいい。

ビストロが舞台であるからして、目当てはミステリというより料理の方(笑)。
鉄鍋で出される「トン足とレンズ豆の煮込み」に始まり、リ・ド・ヴォーのサラダ仕立て、鴨のアピシウス風、子羊のロティ、グリーンペッパーと鴨のパテ、シャンパンで蒸した生牡蠣、オッソ・イラティ(ブルビ)と黒いさくらんぼのジャム・・・・と、書いているだけでお腹が鳴りそう。
高級フレンチではなくビストロだから、くだけたシェフオリジナルなものも多く、応用を効かせたメニューもいろいろと出てくる。体調が悪いお客に「大麦と帆立のスープ生姜風味」とか、外食続きで胃が疲れたという客にピペラード(バスクの惣菜)とか。
そして、ほぼ毎回最後に登場するのが、ヴァン・ショー。三舟シェフのそれは赤ワインをお湯で割り、オレンジの輪切りとグローブ、シナモンを加える。このホットワインが乱れた客の心を落ち着かせるのだった・・・。

7つのストーリーの中で一番印象深かったのは、「ロニョン・ド・ヴォーの決意」。
というのも、この話に登場する超偏食の粕屋氏そっくりのお客を知っていて、その人物を思い浮かべながら読んだので。しかも、連れているのが微妙な関係の女性というのも同じ(笑)。

偏食の客というのは度が過ぎると飲食店泣かせの存在だ。決まったメニューしか出さない店ならまだしも、応用を利かせる店だと振り回されることになる。偏食者にも「謙虚な偏食」と「横暴な偏食」の2種類があって、後者は応用の利く店に好んでやってくる。私の知っている偏食の常連客も、しょっちゅう食べるような店ではないのに週に3日4日来店したのは、わがままがきくからだったのだろう。おまかせがメインなので注文を取るのにまず一苦労。嫌いなものはカテゴリ単位(魚とか野菜とか)、何がダメかより何が食べられるか聞いた方が早い。それでも出されてからアウトなことも毎度、料理が泣いていた。また、同じものばかり食べるから食材の調整が大変。事前に予約が入れば粕屋氏スペシャルのような特別の仕込をし、突然の来店ともなると10人の客が一気に来店したほどてんてこ舞いだった−−−。

パ・マルでも、粕屋氏から予約を受けて後悔先に立たず、作戦会議が開かれるが、ただ一人、ソムリエの金子ゆきにとっては「待ち人」だという。なぜなら・・・
粕屋氏はいつもワインをボトルで注文し、飲み残すから(笑)。
ソムリエにとって余った高級ワインは、趣味と実用(勉強)を兼ねる。
この日粕屋氏に薦めたのは、ドメーヌ・ルロワ2000年もの。金子ちゃん作戦成功。

そんな粕屋氏がいつも連れてくる女性は、彼の秘書であり愛人である。
この愛人が、シェフのロニョンは丁寧に下処理してあっておいしい、彼の妻の手料理は下ごしらえを手抜き(血抜きされていない生臭いレバー、水に晒されていない辛い玉ねぎ、ぬめりをとらず味がしみていない里芋)しているから愛情がない、と言う。

それに対して三舟シェフは、(※以下、ネタに触れます
「わたしの料理は、ただ、おいしく食べてもらうことだけを考えている。もちろん、それで人を喜ばせたいと思っているわけだし、自分でもその方針を変えるつもりはない。だが・・・・・・」と前置きした後、

「知っていますか、レバーの栄養素は血抜きをすれば流れ出てしまう。もちろん、すべてが流れ出るわけではないし、おいしく食べるためには血抜きをするものだけれど、粕屋氏の偏食は尋常ではない。せめて食べられる食材からは、豊富に栄養分を摂取してほしいと奥さんは考えたかもしれない。玉葱だって、水に晒せば栄養分は抜ける。里芋のぬめりだって、そうだ。洗って流せば、味はよく染みるが、その分、せっかくの栄養分を洗い流すことになる。」

「人は楽しむためにも食べるが、生きるためにも食べる。粕屋さんの奥さんが作る料理は、ただ楽しませるためだけではなく、もっと大切なもののために作られているのではないですか?」


そう、そうなのだ!
苦かったり辛かったりは、手抜きではないのだ。

・・・・と、言い訳にも使えるな。


ところで、「理不尽な酔っぱらい」に登場する酔っぱらい○○○(以下ネタバレあり)。
かなり前にジェイミー・オリバーが雑誌で紹介していて試したことがある。
スイカに漏斗を差し込んで少しずつウォッカを注ぐ作業は、食べさせる人の驚く顔が見たい一心でやる地味で根気がいる作業で(数日掛かる)、そういう意味では「理不尽な〜」のようなネチネチした復讐にもピッタリだったわけだ。
でもやっぱり、ウォーターメロン・ウォッカは陽気な方が似合う。
パーティにもってこいなので、ぜひ!(ただし、子供には食べさせないように)

ウォーターメロン・ウォッカ
「アメリカの友人が作っているのをみたときは、おもしろくて驚いたね。学生時代にこの作り方を知っていたらよかったのに。みんなをメチャメチャ酔わせることができたのに!」 byジェイミー

スイカとウォッカの相性は立証されたことだし、スイカ1個も食べきれないので、その後は安直にスイカにウォッカをジャブジャブ掛けたり小玉スイカでやってみたり。(メロンを真っ二つに切って、穴にラム酒をドボドボも好き)
パ・マルご近所の甘味屋「はぎのや」の「梅酒スイカ入りみつ豆」も惹かれる。

  1. 2008/03/05(水)
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